久留米リハビリテーション病院

院長コラム



第9回 地域包括ケアシステム 筒井孝子氏 講演を終えて

毎年恒例で福岡県筑後介護予防支援センター主催の講演会を開催している。今年度も無理をお願いして、兵庫県立大学大学院経営研究科、筒井孝子教授に講演をお願いした。

筒井教授とは、先生が国立保健医療科学院統括研究官の時代に、故西依信樹氏(元久留米市役所長寿支援課課長)の紹介で、2010年12月に東京の国立医療科学院の会議室でお会いしたのがきっかけであり、それ以来、お付き合いをさせていただいている。

今年度の講演会の目的は、2018年度から本格的に始まる「地域医療ビジョンと地域包括ケアシステム」の全国自治体における進捗状況と自治体ごとの地域格差、とりわけ、福岡県や久留米市はどれだけ対応しているのか、あるいは、これから残された時間で我々は何をしなければならないかを確認するとともに、その現実を地域の医療と福祉に従事する関係者に伝えることにあった。参加者は、212名と昨年のおよそ2倍であり関心の高さが窺われた。

講演の骨子は、①地域包括ケアシステムの背景、②地域包括ケアシステムについて、③多職種協働、④地域包括ケアシステムの推進に向けた提案、⑤まとめであった。タイトルだけ見れば、特にインパクトを感じないかもしれないが、講演内容は極めて微細で、厳しい現実が付きつけられていった。おそらくフロアーの皆さんには約2時間の講演時間が半分程度に感じられたのではなかろうか。

紙面の関係で極々簡単に提示する。まず、過去10年の医療費と医療提供体制の問題点が示された。国の切迫した財政を考えれば、今回は待ったなし、先送りなしで2018年度の診療報酬、介護報酬の同時改定を迎えることになる。これに対して、福岡県の病床再編計画、および地域包括ケアシステムの構築ともに他の自治体に比べて著しく遅れていることが指摘された。

医療と介護の連携については、多職種による理念と基本方針の共有・協働(規範的統合)が繰り返し示され、目標達成のためのリーダーシップ、特に行政の役割の重要さが指摘された。

次に、地域包括ケアシステムにおけるチームアプローチでは、ローカルルールの設定、どのようにクリニカル・ガバナンスを構築していくか、さらに新たな考えとしてフィンランドにおけるラヒホイタヤの取り組み(社会・保険医療共通基礎資格)、職種混合・多様性(スキルミクス)などが紹介された。我々には夢物語に聞こえるが、少子化に伴う専門職の人材不足に対応するために、我が国においても育成が進んでおり、新たな資格としてこれから10年後を目指して育成を進めていくとのことであった。

認知症施策については、国と各自治体の間で価値観が共有されていないため今後修正が必要となるであろうこと、医療介護連携については、モデル事業の取り組み状況とその意義が示された。最後にセルフマネジメントのあるべき姿が提示された。

久留米市は、人口約30万の中核都市(久留米医療圏では約46万人)である。久留米市の医療事情を最新の地域医療情報システムの資料をもとに全国平均と比較すると、人口10万当たりの久留米医療圏の診療所数は全国の約3倍、病院病床数は約1.8倍、結果として医師数、看護師数ともに約2倍となる。介護施設数はほぼ全国並みではあるが、さらにサービス高齢者住宅、有料老人施設などが多数点在している。

久留米市は伝統的に「医療と福祉の町」であり、市民が暮らしやすい町であるという。しかし、国の立場から言えば、医療や福祉は税金と保険料で賄われている。言い換えれば、久留米市は税金と保険料に依存した町ということになる。今後は、自治体や地域包括支援センター機能が国の調査対象になるという。自治体能力に応じて国からの補助金が調整されるということらしい。医療・介護報酬も削減される。

2018年以降、医療保険は都道府県単位、介護関連も多くは市町村、あるいは広域連合単位となる。市民にとっては、年金は減り、保険料や一部負担金は増額の兆しさえある。福岡県の75歳以上の一人当たりの年間入院医療費は10年間にわたり全国1位を続けている。また、2016年度現在、救急医療提供体制は全国1位を誇っているという。この体制を維持している救急隊、各医療機関には頭が下がる思いである。

しかし、今後、病床再編での急性期病床の減少、今後の労働力不足を考えれば、今後ともに現状の体制を維持することは困難であることが容易に想像できる。久留米市は、他の自治体と異なり、医療提供体制に恵まれた中で「医療と福祉の町」としての大きな岐路に立たされている。今の我々に求められているのは、今をどうするかではない。覚悟して「10年後の町のあり方」を決め、その実現に向けて規範的統合により行動を始めることであろう。

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第8回 社会保障制度改革と今後

平成26年11月22日、久留米医師会館において福岡県介護予防支援センター(事務局:久留米リハ病院内)主催での講演会を行いました。演題は、「社会保障制度改革と今後」~保健医療福祉分野に求められる人材について~というタイトルでしたが、中身は極めてセンセーショナルでしかも盛沢山の内容でした。

演者は、現兵庫県立大学大学院経営研究科筒井孝子教授です。こう聞くと「ふ~ん、だから」と思う人が多いかもしれませんが、前厚生労働省国立保健医療科学院統括研究員であり、これまでも看護必要度や現在の地域包括ケアシステム等の根幹にかかわってきた人です。現在も、教授職の傍ら政府の内閣官房で活動されている人となると身を乗り出す人も少なくはないかと思います。

約2時間のご講演とその後の約1時間のディスカッションがあっという間に過ぎ去ってしまいました。日本の社会保障制度が危機的状態にあることは、専門職だけでなく、多くの国民も多少理解していることでしょう。しかし、現実は、さらに深刻な状況にあり、2014年4月に公表された病院機能分化などは、ほんの序章に過ぎないと思われました。活字面だけを追っていても真実が見えてこないようです。

先日、安倍政権は、消費税10%を見送る決断をし、国民にアベノミクスの信を問う形で衆議院を解散しました。消費税10%への先延ばしは、短期的な日本の経済成長を懸念して決断されましたが、社会保障費の面から考えれば、2025年に向けての医療・介護のロードマップに多大な影響を及ぼすことになるようです。将来に向けての医療・介護・福祉制度と、それに伴う診療・介護報酬改定はすべて消費税10%を基準に計画されていたわけです。社会保障改革という列車は、スタート直後に燃料不足の恐れがでてきました。スピードを抑えれば失速してしまうかもしれない。そうすれば、さらなる深刻な状況も考えなければならない。

方法はふたつ、他から借りてくる(赤字国債)か、燃費を上げる(診療・介護報酬の抑制、一部負担金の増加)しかありません。まずは病院機能分化が急がれます。2025年度を待つまでもなく、近い将来に多くの急性期を自認する医療施設に対して容赦ない病院・病床再編のメスが入ることになるようです。亜急性期、維持期の医療についても同じです。

日本は有史以来、人口増加、経済成長のトレンドの中で歴史を繰り返してきましたが、すでに人口減少と少子高齢化という新たなトレンドに入り将来的にもこの流れは変わらないわけで、歴史は繰り返さない可能性が高い。それなら、過去を引きずることなく、新しい日本の体制に身を置くことを考えなければならない。国民の意識次第で「日はまた昇る」でしょう。

我々の先祖は、幕末期から明治期にかけて維新を断行し、さらに幾多の苦難を乗り越えて現在の日本を残してくれました。私たちは、いつの間にか先祖の貯金を使い果たしてしまったのかもしれません。だとすれば、今を生きる私たち日本人は、自分たちのためだけでなく、次世代のために新たな困難を乗り越えなければならない時期にいるのだろうと考えます。

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第7回 ご存知ですか?久留米市の地域ケアの実情

わが国の最近の医療と介護、福祉政策については、甚だ首を傾げたくなることばかりです。 地域医療計画、年金政策、高齢者医療、介護保険および福祉政策の見直しなど、あまりにも理不尽な改革(?)ばかりが目立ちます。 県や市政は、当然のことながら国の方針に沿って実施されることになりますが、昨今のように、誰もが納得できないような国策を後追いするかたちで市政が行われることは、 将来の市民生活に多大な損失を与えることにもなりかねません。各地で、市民や高齢者団体が立ち上がっています。 これからは、地方分権の時代です。私たち久留米市民も、自分達の住みよい街づくりのために、市政にもっと興味を持ち、積極的に参加すべき時期が来ているのではないかと思います。

市民公開シンポジウムは、久留米市から地域包括支援センター業務を受託している、特定非営利法人「くるめ地域支援センター」主催、久留米市の後援で開催しました。 シンポジスト(お話する人)は、久留米市の各種団体の代表として実際にご活躍の皆様にお願いしました。 開催目的は、現在、久留米市で実施されている、あるいは今後実施が予定されている医療介護福祉に関する計画を、より具体的に市民の皆様に情報として提供し、 久留米市の将来像を、みんなで考え、市民の意見が少しでも市政に反映されるような活動に結びつけることでした。 今回は、敬老の日のイベントや地区の運動会などが重なりましたが、350名前後の皆様のご参加をいただくことができました。 心から感謝申し上げます。今後とも、久留米市の将来を皆様と考える機会を数多く作りたいと思っています。 これからは、いっそう、市には、地方分権時代にふさわしい、市民のための自立した市政が行われることを期待します。 当日は、講演、シンポジウムのほか、フロアーでは、ポスター形式で、担当者による各地区の地域包括支援センター活動の紹介、医療介護福祉制度、介護保険関連サービスなどの コーナーを設置して、みなさんのご理解が深まるよう努めました。少しでも市民のお役に立つことができましたら幸いです。 次回、開催の折は、多数のご参加をお願いいたします。

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第6回 福岡県介護予防支援センター研修会

(平成20年3月 福岡国際会議場にて)

介護予防支援に関する事業は、これから増大するであろう高齢者の医療費と介護費用を削減することを一つの目的として考えられた政策です。 あえて言い換えれば、少ない財源で国民の老後を効率的に支えていく政策を模索しているということでしょうか。 しかし、高齢者は一定の基準のもとにランク付けが行われ、この基準に沿って管理される仕組みになっています。 そこでは、残念ながら個人の尊厳や選択権は希薄にならざるをえない印象を受けます。 今後、安定した地域ケア体制を作っていくために、官民一体となった協働事業としての体制作りが必須と考えます。 「福岡県介護予防支援センター」は、地域ケアのより良いあり方を考えるために福岡県が独自で考案されたシステムと聞いています。 現場の皆さんには、数値目標に縛られることで、住民に不利益が生じたり、予算が無駄に使われたりすることがないようにお願いします。 目標は、地域住民の安定した生活環境の確保と老後の生活の質向上であり、「介護予防支援センター」事業が、これらの期待に答えられるようになることを切に祈念します。

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第5回 これからどうなる地域の医療と福祉、そして介護サービス

(九州大学公開講座H18年12月春日グローバ・プラザにて)

<激変が予想される一般・療養病床再編の動き>
平成18年4月から大幅な診療報酬の改定が実施された。今回の改定は、過去のどの改定と比べても比較にならないほど大きな打撃を医療界に与えたのではなかろうか。同時に今後の国民の健康管理、あるいは老後の療養環境にも多大な影響を及ぼすものと考える。日本医療経営白書(2005年度版)によれば、平成15年9月1日現在の一般病床の施設数は6486施設(病床数923047)、医療療養病床の施設数は4249施設(346045床)となっており、合わせて、8398施設(1269092床)がある。また、ほかに2669の診療所に25210の病床があるとしている。政府は、欧米諸国と比較して、わが国の医療費の高騰を、病院・病床数の多さと平均在院日数の長さを理由にあげる。その真意は別として、今回の改正では、医療費削減のため、現存する療養型病床のうち介護適応の療養病床のおよそ13万床を平成21年度までに全面廃止、医療保険適応の療養病床についても25万床を15万床にまで削減しようとしている。公的介護保険が施行された平成12年度の国民総医療費は31.1兆円であった。厚労省は、毎年1兆円前後の医療費の伸びを問題視している。また、多くの医療と介護費用が根拠なく無駄に使われていると指摘する。確かに、厚労省の意見にも耳を傾けるべき点はある。過去には、病院を住居代わりに長期療養を続けてきた事例もある。薬漬け、検査漬けといった過剰診療が一部で行われてきたことも否定できない。介護保険以降についても、一部の介護サービス事業者については、そのあり方について問題が指摘されているのも事実である。しかし、今回の改正についてだけ言えば、質の改善を目的としない、明らかに、経費削減のための政策であるというほかない。国民にとっても間違いなく理不尽な改定である。平成18年のわが国の特別会計の予算総額は460兆円(歳出総額でも225兆円)もあり、しかもその使途については、かならずしも納得できる状況にないことは、国民の多くが周知するところであろう。医療費、介護保険、年金などは国民の命と生活を守るための最低必要経費である。特別会計の幾分かを削ってでも国民の命と生活を守るために使ってほしいものである。

平成14年度に国が定めた参酌標準に沿って、久留米市が作成した「介護関係施設の整備の必要性」についての資料がある。平成18年4月1日現在、久留米市には35施設で7170の病床数がある。一般病床は4093床(19施設)、療養病床1479床(17施設)が整備されている。そのうちの、およそ500床が介護型である。もし、今後とも、参酌標準が原則見直されないまま計画が実施されるとなれば、久留米市の医療マップは、前述のごとく激変する。計算上は、介護型と医療型の療養病床を合わせて、およそ1000床前後の病床数が削減されることになる。療養病床ばかりではない。一般急性期病床についても、暫時、半分程度の大幅な削減が見込まれている。厚労省労健局保険課担当者によれば、「厚労省にとっても失敗が許されない大改革」というが、これだけ多くの施設内療養者を在宅で受け入れるだけの能力は現在ない。これから、「自宅」以外の、いろんな意味での「居宅」を整備する予定というが、「居宅」という名の生活保障の薄い「箱物」にならないようにしてほしいものである。

国の方針は、医療・介護を金のかかる施設中心から、より安価な在宅中心にシフトさせようという目論みである。このため地域に総合的なマネジメントシステムとしての「地域包括ケアシステム」(個々の高齢者の状況やその変化に応じて、介護サービスを中核に、医療をはじめ様々な支援が継続的かつ包括的に提供される仕組み)を構築しようとしている。その中心として位置付けられたのが「地域包括支援センター」である(久留米市健康福祉部長寿介護課資料)。

本来、本事業は、市が直轄で実施することを原則とするが、「地域の状況に応じて在宅介護支援センター等に委託することが出来る」となっている。久留米市では、人的・資金的にも直轄は困難として、外部組織に委託することを決めた。このため、在宅介護支援センターの運営にかかわっていた医療系および社会福祉系の13法人は、保険・福祉関係団体の7法人とともに、平成18年3月に、受け皿としての特定非営利法人「くるめ地域支援センター」を設立し、翌月より、市の意向を受けて、早々に業務受託となった。しかし、基本理念や基本方針が崇高なわりには、予算的裏づけに乏しく、しかも人材確保も十分になされないままでの業務開始を強いられたため、運営の困難さは、容易に想像できた。事業開始から4ヶ月が経過した平成18年7月末現在、予想通り、多くの問題を山積したまま事業を継続している。本事業は、行政側の事務手続き上、単年度契約となっている。この1年が過ぎて、事業が困難を極め、次期の契約が継続されないようなことがあれば、地域包括ケアシステムは、その時点で暗礁に乗り上げることになるであろう。来年度以降も、このシステムを維持するためには、委託側および受託側が、お互いの論理を振り回すことなく、ともに協力して難問に取り組む姿勢が、今以上に望まれることになる。

講演では、今後展開されるであろう、医療と福祉そして介護保険サービスの方向性を自分なりに分析して示したい。そして久留米市における同法人を例にとって、包括支援センターの役割と今後の地域包括ケアシステムのあり方と問題点について提示してみたい。

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第4回 今後の介護保険制度改革に思う

(福岡県内科医会報より2005年)

平成12年(2000年)4月に介護保険制度が創設された。当時、私は、医療介護福祉制度の視察のため2回に渡り、デンマーク、ドイツを訪問した。そのとき、北欧に比べて、日本の介護・福祉制度が極端に遅れていることを感じたが、逆に医療制度については、むしろ日本のほうが大変優れているように思えた。その理由は、福祉制度はお粗末でも、国民にとっては、安価で、しかも比較的利用しやすい医療が、介護や福祉の肩代わりを含めて、総合的に提供されていると感じたからである。現在の厚労省が時おり発表する「平成?年の国民医療費は推計?兆円」といった数値に、どれほどの信憑性があるのか甚だ疑問であるが、当時の厚生省は、毎年およそ1兆円の伸びを示す医療費に歯止めをかけるために、ドイツを見習って、平成12年に公的介護保険制度を創設した。同年の国民医療費は31.1兆円であったが、この数年は、政府の医療費抑制政策により、その伸びは、一時的には緩やかとなっている。しかし、全国の介護費用に関しては、初年度が3.6兆円、3年後には5.7兆円、そして平成17年度予測では6.8兆円と確実にその伸びを示している。しかし見方を変えれば、平成9年当時の厚生省は、平成12年の国民医療費を38兆円と予測していたにも拘らず、実際には、医療と介護費用を合わせても34.7兆円と予測をずいぶん下回っているのである。この数値は、厚労省の努力の結果というか、見込み違いか、いずれにしても、ほかの先進国と比較しても驚異的に低い(年間国民総医療費の対GDP比:日本は世界第19位)ものである。さらに今年10月以降、介護保険対象の療養病床については、食費と居住費が自己負担になる。また今後、医療保険との格差是正のために、医療保険療養病床にも食住費の自己負担を適応しようという動きがある。そして患者の自己負担増加により、在宅への移行を促進させようということであろう。

それでは、来年度の介護保険制度の見直しとは、どのようなものであろうか。主な論点としては、①利用者負担の見直し、②保険料徴収対象年齢の引き下げ、③障害者支援費制度との統合、④サービス内容の見直し、⑤介護予防の制度化などがあるが、その中で今回の目玉とされているのは、「新介護予防」であろう。

その理由としては、「介護保険利用者のほぼ半数を占める介護度の低い層(要支援、要介護1)の利用者が増加し、介護保険の財政を圧迫している。しかも過剰の家事援助等の結果、利用者の自立を妨げ生活レベルの悪化を招いているため、介護度の低い層に対するサービスは、今後の廃用防止と身体機能の向上を目的とした内容として、介護度の軽減を実現する」というものである。しかし高齢者、特に後期高齢者の場合は、ある程度ADLが維持されていても、加齢による慢性恒常的な身体機能の低下に加え、予備能力も著しく低下している場合が多い。しかも、本人希望の大半が「現状維持」「今以上に家族に迷惑をかけたくない」「このまま住み慣れた家で死にたい」というものである(アンケート調査より)。このため「意欲」を期待し、一つ上の目標を設定することは、場合によっては、本人に苦痛を強いることにもなる。また、今回の予防給付の一つである筋トレともなれば、適性を欠いた場合には、逆に新たな障害を招いたり、疲労度を高めてQOLを悪化させてしまうことにもなりかねない。新介護予防給付制度を全面否定しているわけではないが、新制度として、予防のためにサービスを提供するというのであれば、これにかかわる担当者には、どのサービスを選択するにしても、それ相当の専門的知識とマネジメント能力が要求される。また新介護予防給付=筋トレとの誤解(?)もあるというが、多くの事業者が、競って新規事業として筋トレ機器の整備を行なっていることも事実であり、その結果、基本理念とは別に、顧客争奪戦が起こるであろうことは想像に難くない。高齢者のQOLを維持する目的であれば、ことさら新たな制度を設けなくても、現状のサービスの質向上に努め、本人の価値観・人生観にあった、他人の押し付けではない、本人が望むサービスを、個々の限度額の範囲で提供すればよいと考える。

今回のモデル事業のスケジュールは、平成17年6月にモデル事業(第一次)用認定ソフトが、国から指定された自治体に送付され、7月から開始されている。予定としては、11月以降に国主催の指導者研修、その後、各自治体主催の同研修が組まれており、12月末までには、地域包括支援センターの委託事業者も確定することになっている。また新聞紙上(7月28日:西日本新聞)で見ると、来年創設が検討されている75歳以上の新医療保険制度では、運営主体(保険者)を各市町村とする方向で政府与党内の調整に入っているようである(2008年施行予定)。今後、国民負担も、さらに増加することが予想される。

このように、政府は、独自の推計から予測した医療・介護費用の増大を理由に、医療・介護・福祉に関する政策の見直しを推進している。すべてが国主導で、しかも異例の速さで、一方的に進められている。残された多くの課題については、自分達で何とかしろといっているようにさえ感じる。しかし、市の窓口に行けば、相変わらず「県が・・」という返事がくる。県に行けば「国が・・」という。そろそろ本当に住民のための「県政」であり「市政」が必要である。各自治体とも、本腰で自前の医療・介護・福祉制度を構築しないと、「市町村崩壊」(著者:穂坂邦夫  埼玉県志木市市長)につながりかねない。そのとき困るのは、我々を含めた地域住民である。
2005/08/31

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第3回 リハビリテーションを担う人たちへの伝言Ⅱ

平成16年6月に、福岡県理学療法士会から講演依頼があり、「釈迦に説法」とは思ったが、勉強させていただくつもりでお引き受けした。内容は、「変わりゆくリハビリテーション医療―多様化する地域ニーズと転機を迎えた医療介護保険制度――そして日本医療機能評価機構が求めるもの」―と題して、感じたままをお話しした。その際、「リハビリテーションを担う人たちへの伝言」と称してコメントを残した。あまりお役には立たなかったであろうと思っていたにもかかわらず、今回の執筆の依頼があったので驚いてしまった。学術的な内容ではなく、引用文献をそろえることも出来てはいないが、何かの参考になれば幸いである。

はじめに
この数年において病院機能分化が政策的に進められている。国策としては、戦後のベビーブーム世代が高齢期に達する2015年ごろまでに、なんとしても新しい形の高齢者介護システムを実現しなければならない。このための手段として医療・介護制度改革が計画されており、今後の5年間で診療報酬、介護報酬とも段階的に大幅な改定が行われることと思われる。急性期・慢性期とも診療報酬体系は包括化(DPC、RUGⅢなど)の方向で進められる。病院は集約化され、独法化や自治体合併、そして機能分化や特化の方向性は変わらない。医療・介護に関する国民負担率も徐々に上昇していくに違いない。

リハビリテーション医療については、1996年にリハビリテーション科が標榜可能な診療科目として周知されるようになった。そして2000年には回復期リハビリテーション病床が算定されるに至り、これと並行して患者を中心としたチーム医療や情報の一元化・共有化といったことが頻繁に言われるようになってきた。2003年4月の時点では、福岡県内で39施設、1842床の回復期リハビリテーション病床が申請されている。しかし、依然として「おまかせリハ」が実施されているところも少なくない。

少し前までは、セラピストが一定の時間、訓練に携われば、訓練対象や、その成果がどうであれ、請求に応じて、おおむね診療報酬が支給された。しかし、それではもう許されない時代が訪れている。対象は限定され、適切な時期に適切なリハビリテーションを提供して、結果を出すことが期待されている。リハビリテーション計画書は、このための契約書のようなものであり、利用者に対しては、説明と同意が義務付けられている。これからのリハビリテーション医療は、確固たる知識と技術の裏づけのもとに、組織的に行われなければならない。確固たる知識と技術とは、特殊な手法を意味しない。個々の経験に基づくものではなく、医学的根拠に基づく普遍的なものであることが必要であろう。しかし技術論への偏重は、リハビリテーション本来の「全人間的復権」という使命を見誤ることにもなりかねない。また組織的とは、大組織であることを意味しない。医師、看護・介護・リハスタッフはもちろんのこと、MSW、ケアマネジャー、事務職員に至るまで、一体となったサービス提供体制を構築することにある。そして利用者にとっては、急性期から慢性期にかけて、あるいは入院から在宅に向けて、一貫した質の高いサービスが途切れることなく、提供されることが望まれる。

医療チームの中の理学療法士
リハビリテーションスタッフの就職活動を行う際に、理学療法学科の生徒は、総じて整形外科を希望する人が多い。直接患者の治療にかかわっている印象があるのであろうか。あるいはPTという専門性から、整形外科疾患のほうが、馴染みやすいのか。また整形外科関連のリハビリテーションの多くは、医師の処方箋のもとに患者とマンツーマンの関係で実施されることが多く、このような人間関係を意図的ではないにしても望んでいるのかも知れない。もちろんこのような関係を否定しているわけではないし、障害や訓練の性質によっては当然必要とされることである。しかしそこにはチーム医療という考えはあまりない。今求められているリハビリテーション体制は、組織だったチーム医療である。回復期リハビリテーション病床の診療報酬体系などは、まさにそのものである。今後医療の包括化が進めば、その傾向はさらに強まるものと思われる。

最近では一人の患者が有する合併症が多く、一人の患者に対して、複数の医師がかかわるケースも珍しくない。そして他職種とのケアカンファランスが開かれ、リハスタッフは計画に沿って、ADLやQOLの向上に直接つながるように訓練を実施し、随時評価と見直しを行わなければならない。訓練に際して、看護・介護スタッフと協同で行うことも日常的に見られるようになってきた。嚥下・摂食訓練、入浴訓練、トイレ動作を含む病棟における移乗動作訓練などは、職種を超えた協同作業の場である。また装具も適切に提供されなければならない。義肢装具士にお任せでは好ましくない。

記録については、まだPT・OT・STが分散して記録している施設が多い。通常、病棟において一人の入院患者に複数科の医師がかかわっても、1患者に対して医師のカルテは一冊である。もちろん看護記録もひとり一冊しかない。リハ部門だけが、未だに職種ごとに分冊されなければならない特別の理由はないように思う。チーム医療を実施する中では、PT同士はもとより、他職種との情報の共有は、自らの実績をより解りやすく提示することであり、組織の中におけるPTとしてのIdentityを一層高めることにも繋がるのではないかと思うが、いかがであろうか。

リハビリテーション看護
看護・介護の方法も以前とは様変わりをしてきた。従来は単科の病棟が多かったが、病床の有効利用のため混合病棟が増加傾向にある。リハビリテーション病棟は、まさに混合病棟と同じである。当院の場合は、脳卒中、脳腫瘍術後、脳挫傷、大腿頚部骨折、頚・脊損、全身麻酔後の廃用症候群などが常時混在している。またその患者が、糖尿病、高血圧、心臓病、慢性呼吸器疾患などの合併症を有し、さらには胃瘻や腎瘻まで造設されている場合もある。気管切開されている事例も散見される。リハビリテーション看護の現場は、単に「ADLに沿ったケア」「自立支援のための看護」などといった生易しいものではない。これらの合併症を持つ患者のトータルケアこそが、リハビリテーション看護の、もっとも重要な仕事である。しかも24時間にわたり、継続して提供されなければならない。リハビリテーション医療は、看護・介護職員の絶え間ない努力の上にしか成り立たないことを医師およびリハスタッフは明確に認識しなければならない。そのような意味で、個人的には、リハビリテーション看護を、究極の看護と認識している。出来れば機能別看護は好ましくない。チームナーシングと受持ち性の併用が望ましいと考える。

情報の共有化がもたらすもの
話をリハスタッフにもどそう。まず情報の共有化を考えてみよう。いま組織の中で、PT同士が各個人の技術や患者情報を、どの程度共有しているだろうか。またOT、STとはカルテを共有しているか。カンファランスは一緒に実施しているか。病棟において患者の訓練経過や評価記録を常時確認できるようになっているか。リハスタッフは看護・介護スタッフと協同で患者のADLやQOLの向上に直接関与しているか。一方、医師はリハビリテーションに興味を持って接しているか。医師の記録から治療方針が読み取れるか。カンファランスには医師も積極的に参加しているかなど、自分たちの組織をチェックしてみよう。

昨今のように、一般病床での在院日数の短縮、回復期リハビリテーション病床の施設基準などを考えると、一人の患者を継続して同一のリハスタッフが担当することは、効率性を考えれば、必ずしも容易ではない。病院内において、一般病棟から回復期病棟や療養病棟への転棟も比較的多く見られるようになった。転院して訓練を継続することも少なくない。その結果、施設内における担当者の変更に際しては、各セラピストの技術はもちろんのこと、訓練に関する理念や基本方針が統一されていなければ、利用者は混乱を招くことになる。転院することになれば、紹介先の施設に対して、訓練が適切に実施されていたことを伝えなければ、地域での責任が果たせないばかりか、信頼を失うことにもなりかねない。情報の一元化と共有化は、ある意味では、病院機能の開示や各セラピストの技術力の標準化にほかならない。

医療機能評価とリハビリテーション
医療の質向上を目的に財団法人日本医療機能評価機構が設立され、2004年10月現在では全国で1247の医療施設が認定を終了している。2003年7月からは付加機能として救急医療、緩和ケア、そしてリハビリテーション機能評価基準が設定され、審査が開始されている。緩和ケア病棟においては、診療報酬上の施設基準として同機構の統合版の認定証を取得することが義務付けられている。将来的には救急またはリハビリテーション専門施設についても、緩和ケア同様の動きがないとも限らない。

付加機能としてのリハビリテーション機能評価を受審するためには、まず統合版の認定証を取得しておくことが条件となる。その後に、あらためて付加機能の審査申し込みを行い、審査後に別途に認定証が発行される。統合版の認定証は5年ごとに更新することになっている。今のところ、付加機能の認定証の有効期間は、統合版の認定期間内に限られているため、統合版での認定から、付加機能の認定証発行までに時間がかかれば、それだけ付加機能の認定期間は短くなる。

当院は2004年5月に日本医療機能評価機構の統合版4.0複合病院での認定証を取得した。そのときの経験から、リハビリテーションに関連した審査項目について少し述べてみたい。

訪問審査は、合同・部門別面接とケアプロセスの3つに分かれて実施される。合同面接では、「病院組織の運営と地域における役割」「患者の権利と安全の確保」「療養環境と患者サービス」などの面接が行われる。部門別では、「診療」「看護」「事務管理」に分かれて部門別面接が行われ、その後に病棟を中心としたケアプロセスが実施される。リハビリテーションに関しては、主に部門別とケアプロセスでの評価となる。

部門別評価
①リハビリテーション部門の体制の整備
病院機能に見合った職員の確保、設備機器の整備、保守・点検が適切に実施されていること。病院の地域における役割に基づいて、リハビリテーション部門の方針が明確にされており、文書によって説明できるようになっていることが望ましい。加えて、家庭復帰や社会復帰を目指して、どのような役割、機能を果たそうとしているのかが重要とされる。

職員配置については、各リハビリテーション施設基準に併せた専任・専従スタッフを明確にしておかなければならない。回復期リハビリテーション病棟を有する施設においても同様である。またリハスタッフはもちろんだが、専任・専従医師が不明確であったり、実態が伴っていないと指摘を受けることになるので注意されたい。

②リハビリテーションの適切な運営
リハビリテーションの基準・手順があり、患者の身体機能などの評価が、適切な手法で定期的に実施されていること。評価に基づき、具体的な目標が設定され、訓練が計画的に実施され、記載されていること。部門の運営が組織的に行われており、他職種との連携が緊密化するような部門運営であること。また、患者の受け入れ実績や在宅復帰率などが把握され、検討される仕組みがあることなどが求められる。

③訪問(在宅)サービス 訪問サービス部門は、各医療機関の特性に併せて評価される。急性期病院では、かならずしも必要とされないが、療養病床やリハビリテーション専門病床を有する施設においては、基本的な体制の整備と、方針および役割を明確にしておく必要がある。自院で在宅サービス部門が整備されていない場合は、他の医療・福祉機関との連携が適切に実施されていれば、とりあえずは問題ない。その際は、連携機関リストの整備や、実績などが記録として確認できることが求められる。

ケアプロセスでは、合同面接や部門別の審査とは異なり、診療と看護の担当サーベイヤーが、一緒に各病棟を訪問して、各部署における業務が円滑に実施されているかどうかを調査する。リハビリテーションに関する評価項目としては、診療領域の「効果的リハビリテーションの実施」と看護領域の「リハビリテーションの適切な実施」がある。前者では、リハビリテーションの必要性が医師によって評価され、適切な指示のもとに、訓練プログラムが作成されていること。計画には患者・家族の要望をとり入れ、説明と同意が行われていること。また定期的に多職種により症例検討会が実施されていることが必要である。そしてこの一連の活動が、記録として確認できることが求められる。また後者においては、ベットサイドや病棟における訓練の実施状況や、他職種と共同での訓練の成果が、どのようにセルフケアに生かされているかなどが評価される。やはり実績が記録で確認できることが望ましい。 そのほか療養病床を有する施設においては、患者の受け入れ体制、在宅療養支援のための通所サービス、家屋評価や改造についての相談、訪問リハビリテーションの実施状況などが、加えて評価される。しかし長期療養病床や特殊疾患病床では、在宅復帰や福祉施設への転院の可能性が少ないという理由から、入院が漫然と長期化しているところが多い。しかし、そのような状況においても、常に患者のQOLや権利などを念頭に置いた、具体的活動があることが期待される。 全体を通じて、基本理念・方針、計画、評価、日々の活動、連携などが、全職員に周知されており、記録や文書で確認できることが必要とされる。 リハビリテーション付加機能の詳細については日本医療機能評価機構のホームページを参照されたい。

おわりに。わが国は、ここにきて大きな転換期を迎えている。地域医療計画の抜本的見直しや、医療・介護保険制度の大幅な改定に伴い、地域における医療機関の役割も大きく変わる。リハビリテーション医療に関しては、ことの良し悪しは別として、施設における在院日数の短縮と診療報酬の包括化が進み、さらに在宅支援にシフトしていくものと思われる。その中で、リハビリテーション医療に対する世間の関心と期待は、さらに高まりつつあるが、同時に、社会的評価は益々厳しいものになってくるであろう。今後は、個々の技術向上は、もちろんのことだが、急速な社会ニーズの変化に対応した、サービス提供体制の再構築が、もうひとつの大きな課題であろう。

追加)
①訪問リハビリテーションについては、来年度から開始が予定されている介護保険制度下における新予防給付制度施行に伴って、その適応も若干異なる可能性があります。
②同時に来年度から施行が予定されている、包括型在宅介護支援センター制度についても、地域の医療・介護・福祉連携を大きく左右することになると思いますので、その動向をしっかりと追跡する必要があるでしょう。これに伴って、従来の基幹型-地域型在宅介護支援センター制度は廃止する方向で検討されています。
③医療機能評価における統合版は、平成17年8月以降は、随時Version4からVersion5へ移行されています。8月以降であっても、それ以前にVersion4で契約をしていれば、Version4での訪問調査が行なわれます。

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第2回 リハビリテーション看護について思うこと

最近の医学の進歩は目覚しいものがあり、医学会でも各専門医の育成が盛んに行われています。医学会々場で石を投げれば3回に1回は専門医に当たるのではないでしょうか。しかし一方では、患者を全人間的に診ることが出来る医師が少なくなったことや、同じ医師が医療事故を繰り返していることなどが指摘されています。平成16年度から臨床研修医制度が発足したのも、このような背景があるからでしょう。看護においても、看護大学や大学院が増え、やはり看護の専門性の向上や、専門ナースの育成に力を入れているようです。この点については看護技術の進歩からも大変喜ばしいことです。そして医療技術の進歩とともに、疾患別専門ナース、感染・安全などに関連した専門ナースなど大変重要な位置を占めるようになっています。しかし、やはり一方で、トータルケアが出来る看護師の育成は出来ているのでしょうか。看護・介護の方法も以前とは大きく様変わりしてきたように思います。従来は単科の病棟ばかりでしたが、病床の有効利用のため、全国的にも混合病棟やケアミックスの病院が増加傾向にあります。また高齢化とともに、多くの合併症を持った患者(敬称略)も増えています。加えて個々の患者や家族のニーズも多様化しているようです。

リハビリテーション病院には、脳卒中、脳腫瘍術後、脳挫傷、大腿頚部骨折、頚・脊損、全身麻酔後の廃用症候群などの患者が混在しています。またその患者が、糖尿病、高血圧、心臓病、慢性呼吸器疾患などの合併症を有し、さらには胃瘻や腎瘻まで造設している場合もあるわけです。また救急医療や手術の進歩により救命率が高まっただけ、重症患者も増えています。気管切開されている事例も散見されます。リハビリテーション看護の現場は、単に「ADLに沿ったケア」「自立支援のための看護」などといった言葉で表現してしまうには、あまりにも適切ではありません。これらの患者のトータルケアこそが、リハビリテーション看護の、もっとも重要な仕事だと考えます。そのような意味で、リハビリテーション看護は、全人間的看護であるといえます。だからといって、このようなケアを看護師さんだけで行なうのは困難です。医師だって無理です。だから医師・看護師・介護スタッフ・リハスタッフ・薬剤師・栄養士ほか、社会福祉士・ケアマネジャー・事務スタッフなど、すべての職種の協力によるチーム医療が求められるのです。これからの看護は、受持ち性とチームナーシングの組み合わせが良い。患者の病態が複雑になり、医師も一人の患者を数人で受け持つことが多くなってきました。看護も一人の患者を数人でケアしたほうが、良い看護ができるように思います。なかには、今まで機能別看護の経験しかない看護師さんもいます。それでも、患者さんのことを思いやる、やさしい心があれば全く問題はありません。それぞれの技術と経験、そして看護に対する思いを持ち寄ったチームのほうが、より良い看護ケアが提供できるでしょう。

リハビリテーション看護は、受持ち制とチームナーシングが良いといいました。具体的には、従来のチームナーシングの中に、介護スタッフ(当院ではサポーター)を含めて1チームを形成します。1患者に対して受持ち看護師1名、介護スタッフ1名を決め、ほかのチームメイトがバックアップします。各チームは看護チーフの管轄下でケアに当たります。病棟全体は看護師長(当院ではマネジャー)が統括しますが、感染・褥瘡といった管理については、各専門スタッフが連携をとって、適切なケアが適切な時期に提供できるよう、所属病棟の枠を超えて協力体制をとります。介護スタッフにとって、身体的ケアに関わる業務が多くなるのは当然です。しかし、おむつ交換、患者の訓練に関わる送迎、トイレの誘導、入浴介助などは「介護職の仕事」といったような考えでは、良いチームケアは出来ません。また介護スタッフは、看護師の業務内容と職制を十分に理解して、同じチームの看護師が、適切な看護が提供出来るように配慮することが必要です。看護と介護スタッフは良きパートナーとしての関係を保つ必要があります。チーム医療の体制は、作ることも大変ですが、持続することにも思いのほか努力が要ります。それは、できるだけ同じ価値観を共有し続けなければならないからです。

若い看護師さんには、もっとリハビリテーション看護に興味を持ってほしい。また十分経験を積んで、生活にもゆとりが出てきた看護師さん達には、一人でも多くリハビリテーション看護の世界に足を踏み入れて、技術の提供や後進の育成に関わってほしいと願っています。

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第1回 今回は当院のチーム医療について紹介します。

一般・回復期リハビリテーション・療養(医療と介護)の3つの病棟に分かれています。それぞれに病棟マネジャーと病棟主治医が決められています。標榜科目は内科・循環器科・リハビリテーション科ですが、リハビリテーションのために整形外科医が常勤しています。そのほかに各種合併症に対応するために多くの非常勤専門医の先生にご協力いただき、対診の体制を充実させており、主治医以外に複数の医師が一人の患者様にかかわる体制になっています。一般病棟は36床で看護体制は2.5:1・介護10:1(正看比率70%以上)です。チームナーシングと受持ち性を採用しています。そのほかの病棟も看護単位は異なりますが、同じシステムを採用しています。病院内に総合リハビリテーションセンターがあり、現在23名のPT/OT/STが所属しています。すべてのリハスタッフは、センターより各病棟および在宅部門に配属されます。病棟では専属スタッフとして、ほかのスタッフと連携して患者様の治療にかかわります。診療録はすべて共有です。亜急性期から慢性期まで、そして脳卒中・脊髄頚髄損傷・大腿頚部骨折術後・神経難病・開腹開胸術後の全身調整に対するリハビリテーションはもちろんのこと、在宅療養中の体力低下に対する全身調整やリハビリテーション目的の入院治療も対応可能です。

また院内および地域間連携のためソーシャルワーカー5名、ケアマネジャー4名が病院内外で活発に活動しています。

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日本医療機能評価機構認定病院| 久留米リハビリテーション病院| 福岡県久留米市山本町豊田1887| TEL 0942-43-8033| FAX 0942-45-0388|
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